voice

「出来ないと言われるとやりたくなるのが人の性。」

「出来ない」と言われると、なんとかして出来ないか?何か方法はないか?と考えてしまうタイプでして、時にそれが思わぬ結果を生むことがございます。

tonysame:japan 細井 礼

トニーセイムジャパン代表取締役社長。
視力は良いものの、地元の眼鏡店で出会ったメガネに惚れて購入したことがきっかけでこの世界へ。高校卒業後はアジアを中心とした世界を旅する。35歳3児の父。最近の趣味はFPVドローン

tonysame:japan 高木 亮輔

1998年にキクチ眼鏡専門学校に入学し、眼鏡セレクトショップでのアルバイトを開始。卒業後の2002年眼鏡フレームメーカーに就職し、11年間勤務。2013年にトニーセイムジャパン入社。直営店勤務、営業を経て現在は商品企画を担当。

先日の撮影しているところの記事もそうなんですが、普段はあまりお見せすることのないブランドの裏側の情報が評判が良いようです。

https://www.tonysame.jp/voice_a/10907813-2/

きっと皆さんが想像しているのと、良い意味で違うことが沢山あるんでしょうね。

エンドユーザーの皆様が目にするのは基本的に出来上がった製品か、それを使ったビジュアルやPOPなどが主ですもんね。

このvoiceを立ち上げたきっかけでもありますが、やっぱり普段私たちが考えていることや、やっていることに共感してくれる方も多いと思うんですよ。結構試行錯誤しながらやってますから笑

確かにそうですよね。

今見ているこのDPシリーズなんかもまさにそう。
取り組みを始めたのは2017年かな。

そうですね。ありがたいことに「トニーセイム は色が良いですよね」と言われることが多く、だったらオリジナルのカラー、しかも「語れるカラー」を作ろうというところからでした。 

そうそう。トニーセイム のカラーが良いと言っていただけるのはありがたいんだけど、それって実はアセテート生地のメーカーさんが作った色だから、あくまでセレクトの問題なんですよ。
もちろんそのカラーを引き出すデザインを考えてはいるけれど、うちのオリジナルのカラーを作って、それが「良い」となりたい欲が当時ムクムクと湧いてました。

それでタキロンさんに相談したんですよね。
唯一国産でアセテートを作っている会社です。

イメージを固めて伝えながら打ち合わせを進めると「それは出来ません」っていう壁にぶつかってしまいました。

色数ですよね。

そう。国産のアセテートっていうのは押し出しという製法で作られていて、国内だと3色までしか色が使えない。
恥ずかしながらそれを知らなかったんですよね。
私のプランは4色、5色と沢山の色をミックスしたものだったので。

担当者さんは「これが実現すればとても良いものができるのはわかるんですが・・・不可能です。」というお話でしたね。

不可能と言われるとやりたくなっちゃうんですよ。私。
なんとかできる方法ないですかね?とか言いながら色々話しをしていたんですよ。

担当者さん困ってましたよね笑

まぁ出来ないものは出来ないですからね笑

そうこうしている時にその担当者さんの上司の方が出てきてくれて。「何楽しそうな話ししているの?」って。

で、私が「国産のアセテートで、4色の色が混ざり合うものを作りたいんです。」と相談したところ、やっぱり最初は難しいっていう話だったんですが、「二次加工すればいいんじゃない?」っていうアイデアが出てきました。

目から鱗でした。
「一度作った生地に加工を施して再度素材として利用する」というアイデアは流石に我々からは出なかったです。

最初にチョイスした3色

どういうことかというと、まず、基本の3色を選びます。
そしてその3色を使って生地を作ります。

(右)最初にチョイスした3色で作った生地 (左)4色目の色

これが一般的な「国産アセテートのオリジナルカラー」ですね。

それを、次に混ぜたい4色目のアセテートと一緒に「二次加工」します。

細かいピースにするイメージです。

それを熱と力を加えてプレスして成型することによって、「4色のアセテート生地」が完成します。

一旦作った生地を加工して、再度固めるので納期は2倍になります。ある意味手間も2倍と言えるので、DP (Double process ダブルプロセス)カラーと名付けました。

二次加工のレシピというか具合によってかなり印象が変わってきます。
下の写真は最初に作ったサンプルなんですが、一つ一つのピースが大きすぎたのと、クリアの分量が多すぎて色が抜けすぎてしまいました。

初回のサンプル 透明に抜けている部分が多い

そして次の写真が修正をしてメガネ用の生地として使いやすいバランスになったものです。

最終のサンプル 全体的に均一にそれぞれのカラーが入っている。

この辺りは実際に作って見ないとわからない部分もあってかなり苦心しましたね。なんせ一度サンプルを作るのに通常の2倍の時間、修正したらまたもう一度・・・ですから。

この時もタキロンさんに色々と融通を効かせていただいて、非常に助かりました。

TS-10800-DP01

先ほどの生地を使って作ったフレームがこちらです。

4色使ったからこその奥行き感のあるカラーになっていると思います。いくつかご紹介します。

TS-10802-DP05
TS-10801-DP04

ほんと、私達のこだわり(わがまま笑)にお付き合いいただけるメーカーさんには本当に感謝しないといけないです。

はい。皆さんのご協力無しには思いを形にできませんから。

生地制作の試行錯誤は他にも沢山あったので、次回も生地についてお伝えしたいと思います。